研究概要 |
タンタルシリサイドによって電極を作成し電極近傍での電圧降下をSTM(走査トンネル顕微鏡)で直接測定することを試みた.またチタン蒸着によってチタンシリサイドを形成し,電極として用いる研究も合わせて行った.以下ではタンタルを電極材として用いた場合の結果について述べる. タンタルをSi(111)に蒸着し電極とする方法では,タンタルが比較的高融点の金属であることから通常のe-beam加熱による蒸着ではチャンバー内の真空度が悪化してしまい,電極でない部分の清浄性が保たれない.このようなことから本実験では真空アーク放電を利用したアークプラズマガンを用いて電極の作成を行った.シリコン試料上へのマスクの種類,プロセスを検討した結果.シリコンウエハをマスクとして使用した場合に最も良い形状の電極を形成できることが明らかになった.STMを使用して電圧降下を直接測定する方法はSTP(Scanning Tunneling Potentiometry)として知られている.電極と下地の清浄表面の間でSTP測定を行った結果,電極と清浄表面の境界と思われるところで,10nm程度の距離で電圧降下が観察できる場合が認められた.このような場所でSi清浄表面上でSTPが可能であれば,目的を達することが可能であるが,残念ながらこのような電極近傍では電極の高さが非常に高くなってしまい,STMでの清浄表面部の観察が不可能であった.電極から十分に離れた場所では清浄表面でのSTP測定が可能で多くの測定を試みたが,顕著な電圧降下を測定することができなかった.これは電極-半導体部の抵抗が試料の抵抗に比べて大きなものになっていたことが原因であると考えられる.カーボンナノチューブなどの高アスペクト比を持った探針を使用することで上述の問題を回避し,シリコン清浄表面上での電圧降下測定を行うことができるものと期待される.
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