研究概要 |
Casimir力は量子効果により発生する力である.古典的な電磁気力が存在しない場合はこの力がサミクロンレンジにおけるマイクロメカニズムの運動をほぼ決定するため,近年,MEMSの研究において注目されている。本研究は半導体間に作用するCasimir力が光照射によってどのように変化するかについて調べた。本年度の研究成果を下記に列挙する。 (1)シリコン間に作用する力の光照射下における測定:これまで,光照射下において微小な力を計測することは困難であった。その理由は光を1μm以下に接近した二つのシリコン間に照射することと熱膨張の低減を同時に実現する必要があったからである。この二つの問題を厚さが4μmのシリコン膜をドラムレンズで押し当てて変形させることにより解決した。実験結果として,光照射によりシリコン間に作用する引力が小さくなることが分かった。この結果は当初予期していたものと逆の結果ではあるが,光により量子アクチュエータが制御できることが明らかになった。 (2)真空中におけるCasimir力測定用カンチレバーの動特性評価:大気による外乱を避けるため,光リソグラフィエッチング法で自作したカンチレバーの共振特性を今年度新たに製作した真空実験装置内で測定し,Q値の向上と引力による周波数シフトを確認した。これにより今後Casimir力測定精度の向上が期待できる。 (3)Casimir力および光イオン注入に関する理論研究:本研究では光イオン注入法によりCasimir力が変化することを利用している。それに関係して光イオン注入で駆動する微小モータの提案を行った。さらに,アクチュエータの構造がCasimir力に及ぼす影響を調べるため,三角形の断面を有する共振器内のCasimirエネルギーについて計算を行った。
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