研究概要 |
最終年度は申請時に計画した研究を遂行し,以下のような研究実績を得た。 1.各種金属ナノ薄膜細線を用いた検証 si基板上にSiO_2層を形成した後,各種接着層を介してCu, Au, Ptナノ薄膜細線(高さ100nm)を作製した。ここで細線上で磁性はりを超音波振動させ,はりと薄膜細線との間で生じる渦電流損失をはりの振動位相変化として観察した。さらに,渦電流損失に起因するはりの振動位相変化量より同電磁気問題の解析モデルを用いて各金属薄膜の導電率を算出した。その結果,金属ナノ薄膜細線の導電率はCu, Au, Ptナノ薄膜細線の順に高くなった。一方,検証のため同じプロセスで作製したCu, Au, Ptナノ薄膜基板に対して4端子直流電位差法による導電率測定を実施したところ,測定値と本手法により算出した導電率とは良い傾向の一致を示し,本手法がナノ構造の電気特性評価に極めて有効であることを確認した。 2.深部電磁気特性評価 上記1のAuナノ薄膜細線上にSiO_2膜を蒸着させた積層構造に対して,深部のAuナノ薄膜細線の電磁気特性を評価することを検討した。Auナノ薄膜細線の裏面から高強度超音波を付与し,これにより薄膜内部での磁場変動を増加させることで,磁性はりの振動により薄膜内に励起される渦電流の高密度化を図った。si基板-高分子薄膜-水なる超音波伝達系の周波数特性を解析し,20〜70MHz帯域の超音波をSi基板内へ高強度に伝達する薄膜として厚さ9μmのpoly (vinylidene chloride)薄膜を特定した。実験の結果,同薄膜の挿入により20〜70MHz帯域の超音波伝達効率は薄膜非挿入時と比較しておよそ4倍に向上した。これにより,確立したドライカップリング超音波伝達様式と,本渦電流顕微鏡法との融合により,深部のAuナノ薄膜細線の電磁気特性を高感度に評価できる可能性を見出した。
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