研究概要 |
金属材料の高性能化、あるいは新機能を創出する手段として結晶粒の微細化が挙げられ、その方法の一つに水素処理法(水素吸蔵-溶体化・マルテンサイト化(α')-熱間圧延-脱水素)がある。この処理によってα(稠密六方晶)+β(体心立方晶)2相型Ti-3Al-2.5V合金の結晶粒径は0.5〜1μmとなり、極めて優れた超塑性を示すことがこれまでの研究でわかっている。本研究では、このTi-3Al-2.5V合金のさらなる微細化を目指すため、熱間圧延に代わる加工法として、材料に強ひずみを付与することができるECAP法(Equal Channel Angular Pressing)を水素処理工程の中に導入し、微細粒化の可能性を探索した。 実験方法として、まず供試素材から切り出した試料(□25mm×長さ50mm)に、0.3wt%の水素を吸蔵させ、これを大気中にてβ変態点より100K高い温度(1143K)に加熱、3.6ks間保持して溶体化させた後、水冷してα'組織とした。その後、この試料から棒状の試験片(□7.6mm×長さ25mm)を切り出し、α+β2相域(993K)に加熱してECAPを行った。最終工程の脱水素処理は、真空中で温度873Kに加熱、3,6ks間保持後炉冷した。その後、光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡(SEM)で組織観察を行った。その結果、ECAPでのパス回数:1パスでは多くの針状組織が残留するものの、パス回数を増加させるにつれて針状組織は少なくなり、8パス行うことにより均一な等軸微細粒組織となることがわかった。SEMで観察した結果、結晶粒径は従来の圧延法を用いた水素処理材と比較して、より小さくなっていることがわかった。この理由として、針状α'組織がECAPにて微細粉砕されたことが一因として考えられる。
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