研究概要 |
申請者らは,エチレンなどの炭化水素系ガスを原料としたレーザCVDにより炭素構造物を作製する研究を行ってきた.生成した炭素棒は極めて可撓性が高い(塑性変形しにくい)ことを見出した.この高い可撓性を有する特徴は,例えば,SPM, AFM用カンチレバー,加速度センサーなどの応用に適していると考えられる.いままで申請者等はレーザ光の走査などは行わず円柱形状のみを作製してきた.本申請では,レーザ光を走査することで複雑形状を作製し,最終的にはデバイスの作製を目的とする.具体的には以下の5段階に分け検討する.i)走査光学系の設計,製作,ii)3次元構造の製作,iii)複雑形状の作製,iv)応用範囲の検討,v)作製するデバイスの選定と試作 本年度はi〜iiiまでを実施した. i)走査光学系の設計,製作:レーザ光を走査することで,構造物を自由に作製できるように走査光学系を実装した. ii)3次元構造の製作:レーザ光の焦点付近で炭素が生成するため,レーザ光を走査することで,生成点を移動させ,単純な形状の炭素構造物を得た.特に,構造物の生成速度は基板部分の熱伝導によって大きく変わることから,熱伝導率の異なる,銅,ステンレス鋼,ガラスを基板に用い,影響を明らかにした.その結果,銅基板上には構造物は作製できず,ステンレス鋼,ガラス基板上には,作製できた. iii)複雑形状の作製:iiで得られた結果を踏まえて,ガラス基板上に壁状の構造物の作製を行ったが,形状にバラツキが出てしまう問題が明らかになった.これは,合成中に形状を測定し,レーザ光の出力を制御するなどの方法で,解決できると考えられる.
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