研究概要 |
リニアモータ駆動の送り系と静圧案内を持つ高精密マシニングセンタを主な対象として、加工中の送り速度などの加工条件を,オペレータの経験と加工中の修正に頼ることなく,自律的に最適化するシステムを実機上に構築することを目的として研究を行った.そのために必要な制御技術として,特に以下の点について研究を行った. (1)切削抵抗のモニタリング手法の提案・評価:加工中の切削抵抗をサーボモータ電流からリアルタイムでモニタリングするシステムを構築し,ボールねじ駆動・転がり案内を持つ従来型のマシニングセンタ,及びリニアモータ駆動・静圧案内を持つ高精密加工機において,そのモニタリング精度の評価を行った.従来型の機械では,ボールねじや案内面に生じる摩擦がサーボモータ電流に多大な影響を及ぼすため,十分な精度で切削抵抗の推定を行うことは難しい.リニアモータ駆動・静圧案内を持つ高精密加工機では,摩擦が小さいため10N程度の分解能で切削抵抗モニタリングを行うことができ,それを基礎として加工制御システムを実装することが現実的であることを実験的に示した. (2)工具寿命を制御するための加工制御法の提案・評価:切削抵抗のモニタリングを基礎として,その制御を基礎とした加工条件の最適制御法を提案した.工具摩耗の進行に伴う切削抵抗の上昇をモニタリングに基づき工具寿命の予測を行い,希望の工具寿命を得るために送り速度を長スパンでどのように調整すればよいかを決定する制御システムを構築し,その効果を実験的に検証した. (3)工具経路の最適化手法の提案・評価:エンドミル加工に通常用いられる等高線工具経路は,パス形状により工具負荷が変動することが避けられず,形状誤差の原因となる.切削関与角を適切に制御するような工具経路の生成法を提案し,それにより工具負荷を均一化し,形状精度の向上を図ることができることを実験的に示した.
|