研究概要 |
複雑流体の内部構造の変化は,流体の特異なレオロジー特性や流動挙動の原因であるため,流動中の流体内部構造の解析は,複雑流体の流動メカニズムの解析のために重要な情報をもたらす.複雑流体の流動誘起構造の解析にはミクロシミュレーションがよく用いられているが,単純な流れ場を対象とするものが主である。そこで,本研究では,より複雑な流れ場における流動誘起構造の解析を目指し,ミクロシミュレーションとマクロな流動解析とをカップリングした流動シミュレータの開発を試みた.本研究では,高分子流体,エマルション,サスペンションを対象として,シミュレータの開発のための基礎的研究を行った.高分子流体に対しては,絡み合い効果を考慮したモデル高分子を用いたブラウン動力学(BD)シミュレーションにより流路内流れのシミュレーションを行い,壁面の影響を調べた.また,マイクロ流路内流れの解析を想定し,壁面との相互作用を考慮した解析のための分子モデルを提案し,さらにそのモデルに基づく構成方程式を導出した.さらに統計力学的シミュレーションと紡糸流れとのカップリングについて検討した.エマルションについては3次元せん断流れ場と急縮小流路内流れにおける液滴変形挙動の解析プログラムを作成し,粘弾性液滴の変形挙動を解析した.本プログラムはエマルション中の液滴変形挙動解析プログラムの基礎となる.サスペンションについては,円板状粒子分散系に対するBDシミュレーションの伸長流れ場への適用の検討を行なった.また,サスペンション中の粒子の移流方程式の係数をBDシミュレーションから求め,ミクロシミュレーションとマクロ流動解析をカップリングするシミュレーション手法の可能性を検討した.
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