研究概要 |
マイクロチップ電気泳動装置など,マイクロオーダーでの化学反応装置や分析装置が発展している.これらはマイクロ流れに支配され,局所的な撹絆などの流体制御や分離操作,マイクロ流れの把握のためには定量的な熱流体計測が不可欠である.更に,マイクロ流れの駆動には一般に電気泳動が用いられるため,発熱の影響を強く受ける.このためタンパク質の電気親和度を計測するアフィニティー・マイクロチップなどでは,温度やpHなどのスカラー量の定量的な計測技術が必要不可欠となる.マイクロ流れの温度計測やpH計測にレーザ誘起蛍光法が用いられている.一般に1色の蛍光を利用しているため(1色蛍光法),マイクロ流路壁面による反射も含めた励起光強度分布に大きく依存する.このため,pHや温度などのスカラー量の定量計測には,任意画像範囲毎のキャリブレーションが必要となる.しかし,流路形状や壁面反射の影響も含めた励起光強度分布の時空間的な変化に大きく依存するため,リファレンス画像を用いた規格化や各ピクセルにおけるキャリブレーションが提案されている.すなわち,計測位置や流路形状が異なる実験ではキャリブレーションの再施行が必要となる.また奥行き方向にスカラー量の分布がある場合は,結像面までに到達する励起光が空間分布を有する吸収作用を受けるため,これが計測誤差の要因となる.本研究では,マイクロ流れにおけるスカラー量の定量分布計測法として2色レーザー誘起蛍光法を提案する.マイクロ流路内におけるpHや温度のスカラー量分布計測に本手法を適用し,その有効性について検討した.
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