研究概要 |
平成18年度では,平成17年度に引き続き,固体高分子形燃料電池(PEFC)の触媒層とガス拡散層との間にカーボン粉からなる水管理多孔層(WML)を設け,これにより生成水のセル外への移動を抑え,燃料・酸化剤が流路入口で低加湿状態であっても,セル全面にわたって電解質膜と触媒層を高湿度に維持できるセル構成を実験的に調査した.流路形状および利用率の変化は,主に流路内のガス流速,圧力,GDL壁面近傍の水蒸気濃度境界層を変化させることになり,触媒層へのガス拡散性,セパレータ流路における生成水の排出性に大きく影響を与えると考えらるため,本年度はセル内部の水移動におよぼすカソード流路形状の影響,特にガス流路深さの影響に注目して実験を行った.また,発電を行わないセル外試験として,セル内部の水移動におよぼすGDLやWMLの効果,発電試験として,加湿温度,酸化剤利用率,WMLの有無がセル性能に及ぼす影響を調査し,セルが高性能を発揮する運転条件を評価した.その結果,流路深さが浅い流路を用いた場合には,WMLの有無によらず,高加湿になるほどセル性能が向上することが明らかになった.一方,流路深さが深い場合には,WMLの有無,利用率の変化に対してセル性能は大きく変化せず,運転環境の変化に対してロバストな発電が可能であることがわかった. また,セパレータ流路の濡れ性が,水の排出に与える影響を評価するため,ガス流速を変化させた際のハイスピードカメラによる水滴排出観察とその時の圧力損失を測定した.その結果,親水流路の場合,見かけの液相速度が小さい場合には,単相流の圧力損失モデルが適用できることが明らかになった.
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