研究概要 |
ディーゼル車はガソリン車に比べると燃費がよいため,ヨーロッパを中心にその利用が増加している.しかしながら,ディーゼル車の排気ガスに含まれるすすなどの粒子状物質(PM)には発がん性があり,また,花粉症などの健康被害も懸念されている.そのため,東京都など都市部を中心に自動車の排出ガス規制が強化され,基準を満たさないトラックやバスなどのディーゼル車は新規登録ができないなどの対策がとられている.このディーゼル微粒子の対策として,コージェライトや炭化ケイ素からなる多孔質のフィルター(Diesel Particulate Filter, DPF)により排気ガス中のPMを吸着・除去する方法が開発された.しかし問題点として,フィルター内にPMが捕集されると,次第に排気圧力が増大して燃費が悪化し,最悪の場合エンジン停止に至ることが報告されている.したがって現状のフィルターは,ある程度PMが捕集された時点でフィルター自体を交換するか,PMを焼却する過程(フィルターの再生過程)が必要となっている. そこで本研究では,構造が単純で熱処理が可能なメタルハニカムについて検討した.既に3次元のX線CT法により撮影したNiCrの多孔体金属の画像から構造を分析し,その内部構造を数値解析に用いることによりメタルハニカム内の流れを調べた.解析手法には多孔体の流れに適した格子ボルツマン法(Lattice Boltzmann Method)を用い,ハニカム内の流れ,反応,拡散を考慮した流れ数値シミュレーションを行った.また,すす粒子によるフィルターの目詰まりを防ぐため,すす粒子を含む排気ガスの流れを模擬し,メタルハニカムによるすす粒子の焼却処理を検討した.フィルター内部の温度を変化させたときのすすの燃焼反応を調べた結果,すすを焼却処理するために必要なフィルター壁の温度や排気ガス中の酸素濃度などの条件が明らかとなった.
|