研究概要 |
本研究は,エンジニアリングフロセスの実環境下で時々刻々にも変化しつつある表面のミクロ構造を,非接触・実時間的・その場的に診断する新しい方法を開発することを目的とする. 平成18年度は,前年度の研究成果を基礎にして,以下の2つの研究を行った. 1.ふく射伝熱工学の分野において,固体の実在表面の熱ふく射スペクトル特性を研究してきた.その実在表面はあらく,表面被膜によって覆われている.その表面のミクロ状態は時間ともに変化することがある.あるいは工業的な表面加工プロセスにおいては,そのミクロ状態は積極的に変化させられる.その熱ふく射スペクトルは,そのミクロ状態の変化に敏感に応答する.ふく射伝熱工学の大部分の表面はふく射の不完全拡散反射性の表面であるので,その拡散反射性の表面の半球的な反射エネルギーのすべてを捉える半球反射率のスペクトルを測定できるのが望ましい.そこで,0.30〜11μmの93の近紫外〜赤外域の波長点の垂直入射半球反射率と2.0〜11μmの42の赤外域の波長点の垂直放射率のスペクトルを同時に4sごとにくり返し測定するスペクトル測定装置を開発した.垂直入射半球反射率や垂直放射率のスペクトルに酸化被膜の成長にともなう薄膜干渉による振動が明瞭に観測された. 2.熱ふく射の放射と吸収に関するKirchhoffの法則は,熱ふく射のエネルギー平衡に関して演繹(deductive)的に導かれた法則である.そのKirchhoffの法則が,波の振幅のみならず位相で強く特徴づけられる電磁波の放射と吸収のスペクトルについて正当であるかについて,分光実験と電磁波動論に基づいて,考察した.また,熱ふく射の源である多数の双極子の放射する球面電磁波が放射源に近接する場で組織的に可干渉的である可能性について考察した.
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