研究概要 |
今年度は,モータ特性を完全に同定し,温度センサを用いることなくモータの逆起電力を用いた速度計測と超高速制御回路によって応答の良い制御を行う計画であったが,モータの同定が難しく十分な性能を得るに至らなかった.一方,多自由度のロボットによる力覚提示に必要な分散動力学計算手法について進展が見られたため,こちらを中心に報告する. ペットロボットなど,生き物のような感触を再現するためには,機構そのものの動力学特性ではなく,表現したい対象の動力学特性を提示する必要があるしかし生き物のような多数の物体が組み合わさって構成された機構の動力学特性を計算することは容易ではなく,本研究が必要とする10〜100kHzでの制御ループの中でそのまま行うことは難しい.そこで複雑な機構全体の計算は低い更新頻度で行い,ローカルインピーダンス制御だけを高速に行うことが考えられる.このためには,複雑な機構のモデルから特定の場所のインピーダンスを求める必要がある. 本研究では,動力学シミュレータを利用することで,機構の任意の場所のインピーダンスを高速に計算できることを発見した.動力学シミュレータは,任意の状態の機構モデルについて,機構内に働く拘束力と機構を構成する剛体の加速度を計算できる.機構に外力を加えた状態と加えない状態でシミュレーションを行うことで,機構に加わる外力と加速度の関係を求めることができる.ローカルインピーダンスは,外力と加速度・速度・位置の関係のことなので,この計算により,ローカルインピーダンスが求められることになる. この手法を用いることで,任意の複雑な動力学モデルを低速にシミュレーションし,任意の場所のインピーダンスを求めるソフトウェアを構築した.今後はこのソフトウェアを実際の機構に適用する研究を進めたい.
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