研究概要 |
魚ロボットは,海洋水産資源の調査や,発電所内パイプ内壁の損傷調査,水害による被災者発見などに役に立つと考えている.実際の生きた魚の動きを十分観察し,更に,その魚周りの水の流動状態を調べ,推進メカニズムを明確にすることで,魚ロボットの高性能化に役立てることができると考え,まず,尾鰭周りの水の流速分布を,粒子画像流速測定法(PIV)により調べた.また,高速度カメラにより取得した魚の動画をもとに,数値流体力学(CFD)による2次元流動解析と3次元流動解析を行い,魚周りの水の流動状態について調べた.その結果,魚は尾鰭の後方部において逆カルマン渦を複数発生し,それらによって水を後方へ押し出し,推進力を得ていることが確かめられた. 魚に似た動作で泳ぐことができる魚ロボット(全長約9cm,サーボモータを2個搭載しており独立に制御可能,動作指令は外部のパソコンから無線で送信)を製作し,前後に配置されたモータ2個の位相差によって,推進能力が変化することを確認した.また,水中にこの魚ロボットを設置し,尾鰭を動作させた.様々な位相差で,その魚ロボット周りの水流についてPIVで測定した.その結果,位相差90度のときが最も魚らしく動作し,その場合にのみ生きた魚と同様に逆カルマン渦列が発生した. さらに,アクチュエータとしてモータを用いずに,コイルとネオジム磁石を用いて尾鰭を遥動させて推進する全長約3cmのマイクロ魚ロボットのプロトタイプを製作し,水中で遊泳できることを確認した.アクチュエータとしてコイルと磁石を用いた魚ロボットは,モータを用いる場合に比べて機構がシンプルで小型化が容易である点,胴体の防水が容易である点,間欠運動のため消費電力が小さい点で,有利であると考えられる.
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