研究概要 |
昨年度は,試作したエネルギー伝送システムを用い,周波数において200k〜1MHz,電力において5〜20W伝送を行ったときの経皮トランス近傍の生体組織のSAR (Specific Absorption Rate)と誘導電流密度の解析を行った.その結果,SARはICNIRPの基本制限(2W/kg)を大きく下回っており,生体に問題なく伝送できること確認した.ただし,生体組織の誘導電流密度に関しては,ICNIRPの基本制限を超えるところもあった.そこで,本年度は,誘導電流密度を減らすための検討を行った. 誘導電流密度は,体外コイル電流に比例することが昨年度の研究により明らかになった.体外コイル電流を減らすためには,a)出力電圧を低く,b)周波数を高く,c)相互インダクタンスを大きくすることが必要である.ここでは,c)に注目し,相互インダクタンスを大きくするために,体外コイルの直径を大きくした拡大モデル(体外コイル外直径100mm,体内コイル外直径70mm,基本モデルよりもそれぞれ10mm拡大)で解析を行った.その結果,それぞれの伝送周波数における最大誘導電流密度は,体表面から20mmの筋層において最大となり,基本モデルと比較すると,誘導電流密度は大きく減少した.さらに,誘導電流密度の減少に伴い,安全に使用可能な伝送周波数の範囲が,基本モデルでは存在しなかったが,拡大モデルでは存在した(600kHz以上(出力電圧12Vの場合)).したがって,コイルを大きくすることは誘導電流密度を小さくする上で有効であることを確認した.これらの成果は,特許出願,IEEE EMBC2006,IEEE Trans. on BMEにも掲載が決まり,極めて大きな成果を得た.
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