研究概要 |
炭化珪素(SiC)等のワイドギャップ半導体は,現状では高品質なバルク基板が得られていないため,電子デバイスは通常,バルクウェハ上に成長した厚さ数ミクロン程のエピタキシャル膜を用いて作製する.従って,光を用いた非接触・非破壊物性測定を行うには,バルク基板とエピタキシャル膜の情報を分離する解析手法が必要となる. 代表者らはこれまで,SiCバルク基板やイオン注入層の電気的特性を,赤外反射分光法を用いて求める手法を開発し,キャリア濃度,移動度,イオン注入層の膜厚・ダメージ体積分率等の値が定量的に求まることを示した.本研究において,冒頭の問題を克服するため、エピタキシャル層両端における多重反射によって生じる干渉スペクトル振動に着目した.すなわち,その干渉振動の周期はエピタキシャル層の膜厚に依存し,振幅・位相はエピタキシャル層とバルク基板層の複素誘電率差に依存するため,カーブフィッティングを用いて解析することで,エピタキシャル層の膜厚及び両層のキャリア濃度・移動度が一挙に求められると考えた. 昨年度は、本手法により得られたエピタキシャル層の膜厚・キャリア濃度・移動度が、電気的手法により求めた真値とほぼ等しくなることを示した。しかしその一方、低いキャリア濃度を有する試料に対しては、測定に用いた赤外反射分光装置の低波数側の制限により、キャリア濃度が測定できなくなるという問題が見られた。これを解決するため、本年度においてテラヘルツ分光測定を導入し、得られた電気的特性値の妥当性を検証した。 テラヘルツ分光によるスペクトルデータと赤外反射分光によるスペクトルの結合を試みた結果、両者は無補正で結合し、何れの測定値には高い信頼性を有することがわかった。全波数域に対するフィッティングにより求めた電気的特性値は、真値にほぼ近く、テラヘルツ分光の導入によって低いキャリア濃度を有する試料にも本手法が適用できることがわかった。
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