研究概要 |
近年のCPUやLSI等の電子デバイスの微細化に伴い、シリコンに代表される半導体材料の局所的な評価方法の確立が急務となっている。以前から、このような材料の表面評価の手段としてはラマン散乱が利用されており、一方で局所観察のツールとしては近接場光学顕微鏡が開発されてきた。本研究では、半導体ナノ材料観察を実現すべく、開口型近接場光学顕微鏡にラマン分光を組み合わせた近接場ラマン分光システムの構築を目指して研究を行った。 開口型近接場光学顕微鏡は、20〜100nmという開口の大きさのみに依存する空間分解能を有するが、小さい開口ほど信号光が弱くなるというトレードオフのために、ラマン散乱光のように特に弱い信号光を測定するためには、測定系の高感度化が大きな課題となる。この課題を克服すべく、前年度に引き続き、開口プローブの先端からの信号光と背景光の干渉を利用した光ホモダイン検出を導入して、開口型近接場光学顕微鏡の高感度化を行った。さらに今年度は、開ロプローブの振動を利用して、振動に同期した信号光の明滅を空間的に分離して分光器に導くことで、背景光を分光スペクトル上で除去することを試みた。また、633nm,515nm,488nm,351nm等の波長のレーザを用いてシリコンのラマン散乱光の顕微分光観察と光ファイバプローブからの背景光を測定し、それぞれの励起波長におけるS/N比を評価した。S/N比の向上にあたっては、光の偏光利用についても実験的に評価した。一方、金ナノ粒子のプラズモン増強作用にも着目し、光ファイバプローブの先端、あるいはシリコン基板上に金ナノ粒子を配置することで、信号光強度を飛躍的に増大させることを試みた。これら複数の技術の組み合わせによる、近い将来の近接場ラマン分光システムの実現が期待される。
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