研究概要 |
大規模集積回路(VLSI)と微小機械構造(MEMS)とは,別々の独立した分野として研究開発され,多くの産業を生み出してきた.MEMSは回路との集積化が容易であると長年言われてきているが,実際には数えるほどしか応用例が報告されていない.また,VLSI研究は回路技術やトランジスタ作製技術についての研究のみで,異種材料や異種デバイスとの融合はこれまで考えられてこなかった.以上の流れをふまえ新しい研究の潮流を生み出すべく,申請者は,VLSIとMEMSとを合成することで,それぞれ単体では実現不可能であった高度な機能を実現する,集積化マイクロシステムの研究を行なっている.本申請では,その一例として,アレイ状のナノプローブをMEMS技術によって作製し,電荷量を測定するVLSIと組みあわせて集積化システムを構成し,沿面放電を起した表面の電荷分布を従来の10倍以上(1pm〜10μmの空間解像度)で精密に測定する応用を試みている。 本年度は前年度のプロセス開発成果「輪郭描画法によるナノ開口・大開口同時描画エッチング技術」を改良し、成果を学会誌論文二本にまとめて公表するとともに、同技術を利用して光フィルタデバイス、MEMSアクチュエータデバイスを試作、成果を学会誌論文二本で公表した。また、絶縁体上に測定回路を集積化する新技術として、シリコーンゴム上にSOI(Silicon on Insulator)LSIを接着してベース基板をエッチングする技術を開発し、作製したトランジスタが大きく性能を落とすことなく動作することを確認し、MEMS界で最も権威のある国際学会「MEMS2007」にて発表した。 2年間にわたるこれらの作製プロセス基礎開発の成果を利用して、SOI基板上にシリコン電極を作製し、700V程度の電位差を与えることで電極間に沿面放電が再現性良く発生することに成功し、電気学会全国大会にて発表した。このように、ナノ計測電極と放電電極を同時に作りこむことができる技術が本助成により完成し、さらなる発展として集積化電極による測定システムを構築助成期間としては終了した後も実験を継続的に実施中である。
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