研究概要 |
多数のリミットサイクル振動子が一様に大域結合したシステムに対して,各振動子の状態変化が時系列信号として同時計測される場合を想定した.この条件下で,システムを記述する位相方程式を時系列データから逆推定する手法を開発した.特に,各振動子の自然周波数や振動子間の結合関数など,システムの重要な特徴量が精度よく推定できることを、レスラー方程式の結合系のシミュレーションデータを用いて確かめた.また,得られた位相方程式によって同期領域の予測が可能であることを示した.化学振動子のデータ(バージニア大学非線形グループとの共同研究)に応用することによって,実システムに対しても,本開発手法が十分に適用できることを確認した.このように非侵襲的なアプローチで結合振動子系の特徴量が時系列のみから推定できるのは活気的なことであり,サーカディアンリズムなどの生物系への幅広い応用が今後期待される. さらに,音楽への応用の一つとして,合唱における同期解析を行った.二名の歌唱者の合唱時におけるEGGデータを計測し,基本周波数の引き込み現象を調査した.同期の強さを表す特徴量としては,引き込み時間と周波数比を用いた.音楽大学にて声楽を専攻する学生と一般学生との比較実験を行ったところ,特に男性において,音大生が一般学生よりも強い引き込み能力を持つことが分かった.女性については男性ほど明確な差異はみられず,歌唱以外の音楽経験などの要因が重要であることが示唆された.合唱を起点として,オーケストラなどの総合音楽へと発展させることで,同期解析の応用範囲を今後さらに広げてゆくことが望まれる.
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