研究概要 |
光ファイバ通信で光周波数利用効率を向上する方法の1つとして,光単側波帯(光SSB)変調方式が期待できる.光SSB変調を実現する変調器として,不要な片側側波帯を光フィルタで除去する方法が最も簡単であるが,光フィルタに急峻なものが無いことが大きな問題であった.従来の光フィルタとは抜本的に異なる光SSB変調技術を開拓するために,新しい光信号処理方法を採用した光ヒルベルト変換技術とそれを用いた光SSB変調技術を検討することが本研究の目的である. 本年度は以下の3点について検討を行い,それぞれ以下のような結果が得られた.(1)光SSB変調の生成に必須の光ヒルベルト変換器を光回路で実現するためには,光ヒルベルト変換器の次数と性能の関係を明らかにする必要がある.そこで,光SSB変調の理論的なモデルを構築し,数値計算によって光ヒルベルト変換器の性能が,光単側波帯信号の光ファイバ伝送品質にどのように影響するかを検討した.その結果,光ファイバ分散による波形ひずみに対して光ヒルベルト変換器次数は大きい方が好ましく,一方で,光ファイバ非線形ひずみに対しては低次数ヒルベルト変換が好ましいことが明らかになった。(2)光ヒルベルト変換器を光回路で実現するために,複数光波干渉を利用した方法の提案を行った.干渉させる光波数の増加はヒルベルト変換次数の増加を意味し,それにより側波帯抑圧比の向上が見込まれることがわかった.そして,光波干渉時の入力強度比は,デジタルフィルタの係数決定法により近似できることがわかった.(3)光回路によるデジタルフィルタ近似の光ヒルベルト変換器とそれを用いた光単側波帯変調信号生成法を検証するために,2光波干渉による光ヒルベルト変換器のとしてマッハツェンダー干渉計を用いて実験を行った.その結果,7.8dBの側波帯抑圧比を観測し,理論モデルから計算できる2光波干渉による側波帯抑圧比の値と一致する結果を得ることができた.これにより,本研究で提案している光信号処理回路を用いた光ヒルベルト変換とそれを用いた光単側波帯変調方式が実現できることを理論および実験により明らかにすることができた.
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