研究概要 |
近年の情報化社会の到来に伴い,携帯端末をはじめとする情報機器の多くはより小型,軽量なものが求められる.また,環境問題の意識への高まりから,消費電力の小さい高効率な電子機器の開発が必須となる.このような背景のもと,電子機器の中で電力消費の占める割合が大きいスイッチング電源回路においては,小型高効率化が特に重要である.また,一層の高周波数化,低電圧大電流化が求められている. 本研究ではスイッチング電源を非線形力学系の1つとみなし,非線形力学系の解析技術を応用しながらスイッチング電源の解析,設計を行う,そして,そこに生じる非線形現象や動作特性を明らかにする.具体的な解析例としてMOSFETの寄生容量の非線形特性がDE級増幅器に与える影響を解析的,数値的に明らかにした.一方,低電圧大電流のスイッチング電源を実現するためには,複数のスイッチングコンバータを並列に結合インターリーブ法が注目され,研究されている.この系は発振器の完全結合系とみることができ,それに関する研究は非線形力学系の解析として重点的に取り組まれている.そこで,E級コンバータについてインターリーブ型位相制御E級dc/dcコンバータを提案した.提案回路は従来の手法と比較して低電圧大電流を高効率のもとで達成できることを示し,さらに位相制御の特性を明らかにした.一方,回路の設計は,解析によって得られた波形式から周期性を保障し,所望の仕様,動作を満足するパラメータを決定する問題として帰着できる.これは非線形回路において分岐条件を満足するパラメータを導出する問題に近い.本研究では電源回路を,計算機を用いて自動的に設計するアルゴリズムを提案し,計算機上での実装を試みた.特にSPICE上で本アルゴリズムを実装することに成功し,本手法の実用化の道が大きく開かれた.
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