研究概要 |
2元線形ブロック符号の新しい軟値出力型復号法を考案し、いくつか符号に関してシミュレーションプログラムの試作を行い、基礎的なデータの取得を行った。まず、過去の研究の延長として、最小重み符号語だけに関する適応的再帰的最尤復号アルゴリズムを応用した探索を繰り返し用いる逐次復号法に関して、誤り制御特性に優れているが実装が簡単ではないことが知られていた拡大BCH符号に対する実装を試みた。その結果、比較的解析が容易な(32,21,6)拡大BCH符号においても有用な再帰構造がないことが明らかとなり、予想に反して考案手法を効果的に適用することができないことがわかった。 この試行の結果を受け、拡大BCH符号に関しては再帰的構造を持つことがわかっている全符号語集合に対する最尤復号アルゴリズムの実装を目指すこととした。特に符号長が長く、既存の手法での実装が困難といわれていた(128,64,22)拡大BCH符号を対象とし、まず、基礎となる硬値出力型の適応的再帰的最尤復号アルゴリズムの実装を行った。この結果、従来法に比べて計算量、消費メモリ量が劇的に削減され、E_b/N_0が0.0dBから2.0dBにおける精度の高い誤り率のデータを取得することができた。さらに、既存手法との比較のために(64,24,16)拡大BCH符号、(64,45,8)拡大BCH符号、(64,22,16)リード・マラー符号、(64,42,8)リード・マラー符号に関しても実装を行い、平均的な計算量を大幅に削減可能なことが確認できた。 続いて最小重みの符号語だけからなる探索手続きを繰り返し用いる形式の逐次復号法を応用し、軟値出力の計算に必要な対抗語を探索する手法の考案を行い、計算機シミュレーションにより有効性を確認した。 最後に、最終目標である軟値出力に対応させるための基本設計をし、(128,64,16)リード・マラー符号に関して、主要な機能ブロックの実装を完了した。これにより、基本的な動作の確認によって得られたデータから、考案手法が有効であることが裏付けられた。ただし、予想通り、消費メモリが大きいことも確認されたので、メモリ消費量を削減するためのアルゴリズムの効率化を行っている。今後は、実装を完了させ、リード・マラー符号、拡大BCH符号の詳細なデータ取得を行い、成果の発表を行う予定である。
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