研究概要 |
研究代表者は,2004年3月に新しいZCZ系列構成法をIEEE Trans.Information Theoryに発表している.提案した構成法では,直交系列とユニタリ行列を使用して再帰的にZCZ系列を構成することが出来る.この構成法は,系列の位相に関係なく適用可能であるが,特に4相ZCZ系列において適用した場合,従来知られていた者よりも長い零相関範囲を持つ者が構成可能となる点において,大きな意義を持っていた.しかし,この構成法では,直交系列とユニタリ行列の組合せが限定されるため,構成可能な系列の周期がある程度限定されてしまうという欠点が存在している.また,近似同期CDMAへの応用を考えた場合,全ての系列間の相関関数において零相関範囲が対等であるよりも,系列の組合せによって零相関範囲が異なるほうが望ましい場合もある.このような状況を鑑み,本研究では,より柔軟な系列設計が可能となるように,提案したZCZ系列構成法を大幅に拡張することを目的としている.前年度の研究では,直交系列とユニタリ行列の組合せの限定条件を緩和することが可能となるような拡張方法を得ることに成功した.今年度の研究では,前年度の拡張方法をさらに発展させることにより,零相関関数が対等でないようなZCZ系列の構成法を得ることに成功した.この新しいZCZ系列は2つの部分集合から構成されており,互いに異なる部分集合に属する系列間の相関関数は,非常に大きな零相関範囲を持っている.このZCZ系列を近似同期CDMAシステムに適用する際には,一方の部分集合に属する系列を基地局の近くに存在する移動端末に割り当て,もう一方の部分集合に属する系列を基地局から遠い移動端末に割り当てる.この割り当てにより,各セル内において,従来のZCZ系列を用いた場合よりも大きな零相関範囲を仮想的に実現することが可能である.
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