研究概要 |
センサネットワークの自動校正を最尤推定する際の,推定精度の自動解析手法について研究を進めた.計測データのみに基づいて得られる最尤推定値には,計測にもちいる単位系など基準の定め方の自由度に対応する不定性が含まれる.この不定性はゲージ自由度と呼ばれ,この自由度の消去には基準をあらわすゲージを必要とする.今年度は,このゲージの導入法と最尤推定値の推定精度の関係を理論とシミュレーションの双方から調べ,計測グラフを導入することにより推定精度について見通しよく議論できることを確認した.すなわち,計測グラフ上の最短経路によりゲージと各センサの距離を定義し,推定値の誤差分散の期待値により推定精度(の逆数)を評価する.このとき,ゲージからの距離の増加にともない推定誤差分散の値も大きくなることや,また計測グラフの半径が小さくなると推定誤差も小さくなることなどを確認した.また,センサネットワークの自動校正手法を,自動車による路面計測に応用することを提案した.この応用においては,走行中の自動車が速度とエンジンパワーと位置を各時刻で計測し,得られた計測データを全車両で共有する.そして,この共有データに基づいて,路面の各位置の転がり摩擦係数を最尤推定する.この最尤推定の際には,自動車の速度とエンジンパワーが比例関係にあり,なおかつその比例定数が路面の転がり摩擦係数であるようなモデルを採用した.シミュレーションにより,この提案手法が路面の摩擦係数や,各車両に固有のパラメータ(車重などを含む量)を推定できることを確認した。また,長距離トラックなど,走行距離の長い自動車の存在により,全体の推定精度が向上することも確認した.
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