研究概要 |
本研究の目的は,自由運動を積極的に利用した制御手法を確立し,できるだけ消費エネルギーの少ない歩行ロボットを開発することである.具体的には,両脚接地時のみ撃力による蹴り動作を行い,片脚支持の状態では何ら力を加えない,という制御手法を研究し,実機を開発した. まず,制御手法に関しては,非線形モデルを用いた数値シミュレーションを歩行動作中にオンラインで行い,最適な蹴り入力を探索するというフィードバック制御アルゴリズムを開発した.その結果,ある程度自由に初期状態を与えても,両脚接地の直前に支持脚をわずかに伸ばすのみで周期的な歩行運動を達成できることが確認できた.さらに,片脚支持の状態で腰部のジョイントにトルクを発生させることで安定性を増すことも検討し,シミュレーションによってある程度の効果が確認できた.より一般的な観点から,不連続性を伴うハイブリッド制御の理論や,オンラインで最適化問題を解くアルゴリズムについても研究を行った. 歩行ロボットの実機に関しては,3号機の開発を行った.1号機は4脚構造でサジタル平面内に運動を拘束したが,2号機は二脚構造のため片脚支持期にラテラル平面内の運動(左右方向の揺れ)が生じ歩行の障害となる場合があった.その原因は構造上の微小なガタやたわみであり,構造の剛性向上が課題となった.そこで,3号機では構造と角度計測の機構を工夫し,曲げ荷重のかかる部分はできる限り可動部を排した一体構造とした.さらに,超音波モータによって支持脚を伸縮させるアクチュエータを独自に開発した.これは,片脚支持期に自重を支えるための消費電力を低減し,かつ,バッテリと計算機を搭載して12kgだった2号機よりさらに軽量化するためである.接地検出のためのセンサも脚部に埋め込み,軽量化と剛性向上を達成した.センサとアクチュエータの周辺回路も独自に開発し,動作を確認した.
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