研究概要 |
コンクリートの引張変形特性およびひび割れ発生条件に関する検討に適用できる簡易型直接引張試験方法の開発に取り組んだ。1)供試体の作製が簡易であること,2)載荷の際に特殊な装置や技術を必要としないこと,3)偏心の少ない載荷が行えること,4)8割以上の確率で測定区間内にて破断すること,以上の4点を満足できる供試体ならびに試験方法を開発できるよう,試行錯誤を繰り返した。本研究で得られた成果を以下にまとめる。 1)供試体の作製について 供試体の作製の際の簡易性は従来の試験と同等のレベルに留まった。ただし,同等の簡易性であっても,円柱型にできる,骨材下面のブリーディングの影響を除去できる(水平方向にコンクリートを打設する)点は,本供試体ならではの特長である。 2)載荷について 本試験は,鉄筋の引張試験を行える一般的な万能試験機があれば実施できる。載荷途中に偏心の影響を除去する作業が必要になるが,スパナでナットを軽く調整するだけの作業であり,特に問題はない。 3)偏心の低減について 本試験では,載荷途中に,荷重伝達用のボルトを固定しているナットを微調整することにより,供試体に生じがちな偏心を除去することができる。ただし,この作業を載荷の最終段階まで続けることはできない。よって,最終段階で発生しがちな供試体の2次曲げは防ぐことができない。 4)測定区間内での破断確率について 本試験の供試体は,約60%の確率で測定区間内にて破断する。荷重伝達用のボルト先端部の位置や形状を改良することにより,確率はさらに向上できると考える。一方,測定区間外で破断した場合の引張強度は,測定区間内で破断した場合とほとんど変わらないことも明らかになった。このことから,現状の破断確率でも,測定結果を得るに際しては特に問題はないと考えている。
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