研究概要 |
本研究では,社会基盤構造物の劣化や災害などに対して,近年普及が進展しているセンシングシステム対して,計測に関する情報を統合的に管理・運用するための基礎的な研究を行った.具体的には計測システムから得られたデータを圧縮するとともに,損傷検知に必要な情報を保ったままで,主にネットワーク負荷を軽減することを目的とし,信号処理技術の開発およびASCEのベンチマークプログラムを用いた効果の検証を行った. 開発した技術は,構造物の加速度データなどセンシングデータを,まずフーリエ変換し,周波数特性をもとめ,その振幅データをHaarウェーブレットにより,ウェーブレット係数を求め,係数の値の大きなもののみを利用して損傷検知を行うものである.この損傷検知手法は,上記に述べた処理を,構造物の健全な状態から得られた振動データと,構造物に何らかの損傷がある振動データに適用し,得られた情報を比較することで損傷の有無を明らかにする. ASCE(American Society of Civil)のSHM(Structural Health Monitoring)グループの開発したベンチマークプログラムに本手法を適用することにより,きわめて微少な損傷を除き,その有無を検知するとともに,損傷を与えた部材の数に応じて,本検知手法は同様の傾向を示し,損傷の有無だけでなく,損傷の程度についても相対的な比較ができることが明らかになった.また,センシングデータに対し容量を5%以下に圧縮しても損傷を検知することが可能であることが判明した.
|