研究概要 |
平成18年度は,鋼製橋脚の地震時挙動と起点となるき裂の特徴について,以下のような検討を行った. (4)脆性破壊発生におよぼすき裂先端形状と破壊靭性の影響 脆性破壊の発生を温度管理のもとで実際に再現し,起点となるき裂先端形状,鋼材の破壊靭性レベルの影響について小型試験により検討した.小型試験体には,鋼材靭性レベルの異なる各種鋼材を使用し,様々なき裂先端形状を有する疲労き裂を導入し,破壊試験を行う.その結果、き裂形状の影響により、破壊靭性の評価値は変化し、き裂先端が鈍い場合には、通常の疲労き裂を起点とした場合の破壊靭性値と同等以上の評価値を示すことなどが明らかとなった。 (5)大型試験体を用いた破壊発生 本研究の以上の成果をもとに,実際の鋼製橋脚の板組みや溶接などを再現した大型試験体における地震時の破壊発生挙動について、観察した。その結果、内部欠陥からのき裂発生もき裂が発生しており、鋼材の破壊靭性が高い場合には、低サイクル疲労き裂からの脆性破壊が発生しないことを確認した。 (6)鋼製橋脚における地震時脆性破壊の発生シナリオの整理と脆性破壊防止案に関する検討 交通荷重により既に疲労き裂が発生しているケースと、地震時に発生した疲労き裂が圧縮されたケースにおいて、き裂先端形状が鋭くなり危険なシナリオであることが判明したが、これらの2つケースについて、本研究により鋼材の破壊靭性値の保証をすることにより脆性破壊を防止できることを確認し、脆性破壊防止対策として必要破壊靭性レベルを提案した。さらに、応力多軸性の影響による脆性破壊の発生シナリオについても材料特性面からの対応が可能と考えられることを示した。
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