研究概要 |
微細ひび割れ発生を積極的に抑制することで,破壊局所化を抑え込み,巨視ひび割れ発生を制御させることを考え,収縮ひび割れ抵抗性の向上のために,微細ひび割れ抑制を長さ10mm未満の微小繊維で,巨視ひび割れ抑制をそれ以上の長さの短繊維で対応させる高性能ハイブリッド・ファイバー・コンクリート(HFC)の開発コンセプトの着想を得た。 本研究は,PVA微小繊維とPVA短繊維を使用したHFCについて,拘束時の拘束応力発生源となる収縮変形挙動に対するハイブリッド・ファイバー補強効果を,粗骨材の混合有無に対する影響も考慮し,理論及び擬似完全拘束実験から検討し,HFCの収縮ひび割れ抵抗性の向上メカニズムを考察し,新たに有用な材料設計手法を提案した。 その結果,次のことを示すことができた。 (1)モルタルをマトリクスとしたハイブリッド・ファイバー補強効果を,モルタルのクリープを考慮した有効弾性率発現に基づき,繊維寸法と余剰モルタルとシアラグと2相並列・直列の混合モデルによる円柱体単位セルで定量化できた。 (2)ハイブリッド・ファイバー補強による単位セルの収縮力学挙動は,構成材体積率に基づき3相直列モデルで定量化でき,モルタルベースのHFCmに粗骨材を混合したHFCcについても,2相直列モデルで定量化でき,HFCの若材齢からの完全拘束収縮挙動の定量評価方法を提案できた。 (3)提案手法によるHFCの拘束収縮挙動のパラメトリック解析結果から,繊維ヤング率のみ変えると,拘束応力よりも収縮歪が大きく変化し,モルタルヤング率のみ変えると,収縮歪よりも拘束応力が大きく変化していることが明らかになった。これらのことは,タイル等の建築仕上材への左官材料にHFC利用を考えると,仕上材の浮き剥落しないように,HFC中の繊維ヤング率をパラメータとして,収縮歪を制御する材料設計が有用であり,また,構造躯体の収縮ひび割れ抑制には,HFC中のマトリクスのヤング率をパラメータとして,拘束応力を制御する材料設計が有用であることが把握できた。
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