研究概要 |
平成19年度は,以下に示すように,構造物の様々な応答量の不確定性に注目し,錐相補性条件に基づいて応答量のばらつきを評価する数値手法を開発した。 [1]構造物が受ける外乱の大きさや方向を正確に予測することは,本質的に困難である.また,現実の構造物は,解析モデルとは異なり,施工誤差や損傷などの影響を受けるため,その剛性は不確定である.本研究では,構造物の剛性と構造物に作用する外力の双方が非確率論的な不確定性モデルに従ってばらつくときに,構造物の応答のばらつきを安全側で評価する手法を提案した.特に,変位や応力などの静的な応答量のばらつきを,外側から近似する楕円体を求める手法を開発した.錐相補性条件を用いることで,このような楕円体は半正定値計画問題を解くことで得られることを示した.また,従来の区間解析で用いられる区間は1次元上の楕円体とみなせるため,提案手法は通常の区間解析の枠組を特別な場合として含むことを示した.本研究および関連研究の成果は,2編の論文として国際誌および英文編著に掲載された. [2]本研究では,トラスに作用する外力が不確定な場合に,塑性崩壊荷重のばらつきを評価する数値手法を提案した.特に,死荷重と参照外乱の2種類の外力を考え,死荷重が非確率論的な不確性を有することを仮定する.このとき,塑性崩壊荷重の最小値を最悪塑性崩壊荷重と定義し,その値を求めるための混合整数計画問題を定式化した.さらに,分枝限定法および離接カットを用いて最悪塑性崩壊荷重を求めるためのアルゴリズムを提案し,数値実験によりその有効性を確認した.本研究および関連研究の成果は,1編の論文として国際誌に掲載された.
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