研究概要 |
本研究は,可動吹出し空調の大空間への適用を目的とし,居住域における温熱・気流性状把握について,LESを用いて解析を行っている。本年度は、CFD解析の精度向上のために、各種乱流モデルを用いて解析を行った。また、LESを用いて、可動吹出し空調システムの数値シミュレーションを行った。本年度に得られた結果を以下に示す。 ・低Re数型乱流モデルを用いた加熱平板強制対流解析(その2)Launder-Sharmaモデルと標準k-εモデルの比較検討 空気を熱媒とする躯体蓄熱や太陽熱集熱のCFD解析では,強制対流下での熱伝達性状を精度よく予測することが望ましい。本研究では,CFDの対流熱伝達量予測精度の明確化を目的とし,レイノルズ数を変更した場合について,低レイノルズモデルと標準k-εモデルの比較検討を行った結果について報告した。 ・床暖房室内の気流・温度分布性状に関する研究(第8,9報) 第8報では,低Re数型k-εモデルの一種であるV2Fモデルの検討を行った。格子総数と乱流モデルを変えた4種類のCaseによる比較解析の結果,高Re数型k-εモデルは乱流境界層内を直接解かないので,格子分割が粗い場合,静穏空間を精度良く再現出来ないことが解った。また,V2Fモデルは噴流の衝突からの流れの再現性については実験結果と良い一致を示すことが解った。第9報では,各種k-εモデルによる解析結果と実験結果の比較を行った。格子総数と乱流モデルを変えた4種類のCaseによる比較解析の結果,高・低レイノルズ数型k-εモデル,V2Fモデルともに,温度分布は概ね一致することが解った。しかし,スカラー風速については,冷却面対向壁で風の強弱が見られることが解った。 ・可動式ノズル吹出口の大空間への適用に関する研究(第3報)LESによるCFD解析と測定実験との比較 一般的に大空間の空調ではノズルが用いられるが,従来のノズルは拡散性が低く,居住者に不快感を与えるという欠点があった。そこで,拡散が期待できる可動ノズルを用い,実験と解析を行った。既報では大空間におけるLESによるCFD解析を行ったが,本報では縮尺模型を用いて測定実験を行い,検証を行った。その結果,噴流の位置にずれが見られたが,全体の様相を考慮すると測定実験とCFD解析は概ね近い結果が得られた事が解った。CFD解析の検討ケースでは,測定実験は非等温室内下の状況のため,浮力効果を考慮したケースの方が,測定実験により近い結果が得られることが解った。
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