研究概要 |
平成17年度に製作し,18年度に立ち上げ及び調整を行ってきた実用超伝導線材の極低温応力/歪依存性評価装置を用いていくつかの実用線材の特性評価を行った。試料線材にはタンタル(Ta)繊維で内部補強したNb_3Sn線材,銅・ニオブ合金(CuNb)で内部補強したNb_3Sn線材,従来型の(補強無しの)Nb_3Sn線材の3種類を用意した。これらの試料線材について,14-18テスラ(T)の磁場中,4.2Kで応力-歪特性,臨界電流I_cの歪依存性を調べた。 Ta補強のNb_3Sn線材は従来よりTaの延性に起因する高延性かつ,Taの熱膨張係数がNb_3Snのそれと近いために残留歪が小さいことが特徴であった。応用面からはこの残留歪を大きくすることが課題であったが,今回それに成功し,応力/歪依存性も大幅に向上させることに成功した。本研究はこの開発の評価を担当した。 得られた結果の一部を文献値と比較し,良い一致を確認した。つまり,本研究で製作した極低温応力/歪依存性評価装置によって得られる結果の妥当性が示された。本研究によって得られた結果の一部は,複合超伝導体の電磁機械特性に関する国際ワークショップおよび国際磁石技術会議において発表した。 本研究によって得られた成果の意義は,実用超伝導線材の臨界電流の応力/歪依存性のデータベース構築に資するだけでなく,強磁場発生のためのコンパクトな冷凍機冷却超伝導マグネットの開発や,核融合炉用・加速器用の大型超伝導マグネットの開発においても重要なデータベースとなることにある。
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