研究概要 |
本年度は,前年度で得たRu-Zr-Al薄膜金属ガラスの知見を基に,Ru-Zr-X (X=Fe, Si, Co, Mo)合金系でコンビナトリアルアークプラズマ蒸着法による,金属ガラスの探査を行った.その結果,Si, Fe, Co添加では非晶質領域は拡大したが,金属ガラスを見出すことはできなかったが,Ru-Zr-Moで金属ガラスになる組成を発見した. 上記の研究から,Ru-Zr系非晶質合金薄膜は973K以上の結晶化温度を示すため,高温材料として期待できる.そこで,Ru-Zr系非晶質合金薄膜のガラス金型及びSiナノデバイスのメタルゲートへの応用について検討した. ガラスレンズ用金型材料の検討のため,Ru-Zr-Al及びRu-Zr-Mo非晶質合金薄膜について,溶融ガラスとの融着性及び被削性について評価を行った.その結果,いずれの試料も溶融ガラスとの融着性は乏しかった.しかし,被削性はよくなかった.BNC切削ツールでは,切削することはできたが,ダイヤモンドツールで加工を行うと,工具の磨耗が著しかった.これは,RuがFeと同じ族に属するため,Feと同様に,Ru中にダイヤモンドの炭素が拡散したためと考えられる.Ru-Zr系非晶質合金薄膜のガラスレンズ金型への応用は,材料の被削性及び切削技術の改良が必要である. Siナノデバイスのメタルゲート材料は,内部組織によらず,仕事関数が高く,ばらつきが少ないことが望まれる.また,デバイスの製作過程でブラッシングを行うため,結晶化温度が高いRu-Zr系非晶質合金薄膜が有力な候補材料として期待できる.そこで,Ru-Zr-Al非晶質合金薄膜について,仕事関数の組成依存性を調べた.その結果,非晶質領域で,組成の変化に伴い,4.8〜3.5eVの範囲で高い仕事関数を示した,以上の結果から,Ru-Zr-Al非晶質合金薄膜は,Siナノデバイスのメタルゲート材料として期待できる.
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