研究概要 |
固体電解コンデンサーはNb基板に誘電体層として陽極酸化皮膜を形成させた構成であり、そのNb基板を適切に合金化することにより誘電特性の優れた新規固体電解コンデンサーが実現すると考える。本研究では優れた性能をもつNb合金型固体電解コンデンサーの開発を目的とし、NbにNを系統的に添加した合金を基板とした試験体を作製し、静電容量(CV値),漏れ電流の測定、および陽極酸化皮膜の構造を評価した。Nb-N合金(N量:0〜17at.%)をアーク溶解法により作製し、真空雰囲気で1673K、6hの均質化熱処理を施した後、15×10×1mm^3の合金片を切り出した。合金表面を化学研磨後、電界浴(リン酸0.6体積%水溶液)中に浸含させ、温度60℃、化成電圧16Vで陽極酸化処理を施し試験体とし、誘電特性を測定した。また、FE-SEM, TEM, AESおよびXPSを用いて陽極酸化皮膜の構造解析を行った。 Nb-1〜17at.%Ti試験体と参照用のNbのみの試験体では、CV値において、基板組成がNb-1〜6at.%Nの範囲ではN含有量にともなってCV値は増加し、Nb-6at.%N合金を陽極酸化材料とした試験体では、Nbのみの試験体よりも40%程度の増大が見られる。ここで、Nb-N合金ではN含有量にともないNb固溶体中の体積分率が減少し、Nb_2N相が増加する。Nb_2N相は陽極酸化処理前の化学研磨によって優先的に腐食され、凹凸となる。また、基板Nb-N合金上の陽極酸化皮膜中にはNb_2O_5に加えてNが存在することが確認できた。よって、N含有量の増加にともなうNb-N合金固体電解コンデンサー試験体での静電容量の増加はNb_2N形成に起因する実効比表面積の増加および陽極酸化皮膜中のN含有に起因すると考える。また、漏れ電流およびバイアス依存性は基板組成がNb-1〜17at.%Nのいずれの試験体でもNbのみの試験体より向上した。これは陽極酸化皮膜中のNの分散が要因であると考える。以上の結果から、Nb-N合金系では、Nb-6at.%Nあたりの組成でCV値、漏れ電流の両方の特性が改善される陽極酸化皮膜が得られることが示された。
|