研究概要 |
バイオマテリアルに対して加工と同時に骨融合性(生体活性)を付与するための手法として,加工中ワークが常に晒される研削液の成分に注目し,化学的な反応を利用して骨融合性を付与することを試みた.その結果,研削液の主成分を水酸化ナトリウムとし,昨年度の研究成果として構築した表面改質加工システムを利用して加工を行うことにより,一般的に生体活性能を持つことが知られている非晶質のチタン酸ナトリウムの層が形成されることが明らかとなった.これは,上記表面改質加工システムにより加工を行うことで,加工面は化学的に活性な状態となっており,酸化反応過程において研削液中に含まれるナトリウム元素と効率的に反応が起こることにより形成されたものと考えられる. また,そのような表面に対して生体活性能を調査した結果,同材をSBF(擬似体液)中に浸漬すると約一週間程度で骨融合性の高いハイドロキシアパタイト(以下,アパタイト)が自然析出することが明らかとなった.これは上記プロセスにより形成されたチタン酸ナトリウム層の存在に起因するものであると考えられる.さらに,アパタイトの析出量や時間は表面改質加工システムにおける電気化学反応を調整することにより,ある程度制御可能であることを明らかとした. 以上のことから,本研究で考案した加工システムを利用し,研削液の成分等,加工条件を適切に設定することにより,加工面に骨融合性を有する表面改質層を形成可能であるといえる.本研究で得られた知見は今後のバイオインプラント開発に大きく貢献するといえる.
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