研究概要 |
本年度は,超臨界急速膨張法による有機ナノ微粒子創製(モデル物質:RS-(±)-イブプロフェン)に対する溶質溶解部-粒子生成部間の過飽和度の影響,および本手法により得られた粒子の医薬品としての生物学的利用能を検討した. 溶質溶解温度を308.2Kおよび313.2K,溶質溶解圧力を13.5-20.0MPaと変化させ,溶質の溶解度が粒子創製に及ぼす影響を検討した.得られた粒子は球状であり,一次粒子の最小粒径は50nm程度,平均粒径は200nm程度(原料の約1/290)であり,その粒径分布も非常に狭いものであった.これは,RS-(±)-イブプロフェンの結晶サイズとしては世界でも最小レベルである.また,XRD分析およびFT-IR分析により,結晶構造は微粒化前と微粒化後で変化していないことがわかった.一方,融点および結晶化度は,微粒化後は微粒化前に比べるとわずかに減少していた.得られた粒子の平均粒径は溶解圧力の上昇に伴い減少し,溶解温度の変化にはほとんど影響を受けないことがわかった.ここで,溶解圧力および溶解温度の影響を溶質溶解部-粒子生成部間の過飽和度により整理してみると,過飽和度の増加に伴い平均粒径が減少していることから,過飽和度が大きい場合に核発生が優先的に起こるという一般的な結晶成長理論が成立していることが明らかになった.さらに,過飽和度と平均粒径の間にほぼ線形性が成立することがわかった.つまり,超臨界急速膨張法による有機ナノ粒子設計は,溶質溶解部-結晶生成部間の過飽和度に基づいて議論することが可能であることが示された. また,得られた粒子の生物学的利用能(溶解性)を日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)により検討したところ,創製条件が異なる粒子では溶解性には大きな差がなく,原料と比較して初期溶解速度は2-5倍向上し,溶解時間は最大で約1/2に減少することがわかった.
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