研究概要 |
選択酸化反応に高い活性を有する新しい表面固定化触媒の設計のために、Mn4核クラスター,Ruモノマー,Reクラスターを基本骨格とした表面固定化金属錯体触媒を調製した。表面の水酸基との選択的な反応により、各前駆体錯体を選択的に表面に固定化し、表面に特異的な新しい金属錯体構造を設計し、分子状酸素を酸化剤とした選択酸化反応(ベンゼン選択酸化、アルケンエポキシ化反応、アルデヒドの選択酸化反応)を検討した。また、表面での固定化構造は、FT-IR,固体NMR, XPS, XRD, XRF, XANES, EXAFS, ESR, UV/VIS, BET, TPD, DFTなどの手法により明らかにした。 Ru-ジアミン単核錯体を合成し、この側鎖のスチレン基をシリカ表面に固定化したスチレン側鎖と反応させて、シリカ表面にRuジアミン錯体を固定化した。イソブチルアルデヒドと酸素の雰囲気下で、この固定化Ru錯体のp-cymene配位子が選択的かつ定量的に脱離することを見出した。p-cymene脱離後も、固定化Ru種は単核構造を保持しており、選択酸化反応に高い活性を持つ配位不飽和Ru単核錯体を安定に形成されることに成功した。また、このp-cymene配位子の脱離は、300nm以下の紫外光照射でも選択的に進行することを見出した。p-cymene脱離後の配位不飽和Ru錯体は、酸素分子を用いたアルケンのエポキシ化反応、アルデヒドの選択酸化反応に高い活性と選択性を示し、再利用も可能な優れた触媒特性を示した。DFTによる密度汎関数計算から、アルデヒドのカルボン酸への変換で獲得するエネルギーと配位不飽和サイトへの分子の配位による安定化のエネルギーを利用して、p-cymeneの脱離と反応が進行していることを見出した。
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