研究概要 |
カタラーゼ封入リポソームの高性能化と特性の評価について検討を行い下記の結果を得た。 1.脂質分子集合体による過酸化水素分解活性 酵素が存在しない条件下において脂質二分子膜が過酸化水素の分解を促進することを明らかにした。特に脂質分子の疎水鎖の構造を種々変化させて検討したところ,脂質分子が脂質二分子膜構造(リポソーム)を形成するときに高い過酸化水素分解活性を発現することを示した。リポソームの活性はカタラーゼに比べて非常に微弱であった。 2.高活性なリポソーム内封入カタラーゼの調製と特性 リポソーム内水相に種々の濃度のカタラーゼを封入して保存・熱安定性を調べた。その結果,リポソーム内水相のカタラーゼ濃度が高いほどカタラーゼの四量体構造の解離による熱失活が抑制されることを明らかにした。リポソームの粒子径は内包されたカタラーゼ活性に大きな影響を及ぼさなかった。さらに,リポソーム内カタラーゼによる繰返し過酸化水素分解経過を実測して,酵素活性利用率が低いほど,カタラーゼ活性がリポソーム内で安定であることを示した。 3.リポソーム表層に複合化したカタラーゼの調製と特性 カタラーゼの活性利用率の向上を目的として,リポソーム膜の表層に共有結合で複合化したカタラーゼを調製した。脂質膜に複合化されたカタラーゼは過酸化水素に対し高い反応性を示したが,リポソーム内封入カタラーゼに比べて熱安定性が低下した。脂質膜表層とカタラーゼ間の結合部位数を最適化することによりカタラーゼ活性を安定化できることを示した。 以上の結果より,最適に調製されたリポソーム内封入カタラーゼが遊離カタラーゼに比べて高い安定性を有し,過酸化水素分解触媒として有用であることが示された。
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