研究概要 |
本研究は、細胞内環境を模倣した分子クラウディング実験系を構築することで、in vitroとin cellの橋渡しとなるような核酸構造と熱力学的安定性のデータベースを構築し、細胞内の核酸の機能に関する知見を得ること目的としている。昨年度に得られた核酸構造と塩基対の熱安定性に対する分子クラウディング効果の知見を基に、平成18年度は二次構造形成速度とリボザイム反応に対する効果を調べた。温度ジャンプ法を用いてワトソン-クリック塩基対の形成速度と解離速度に対する分子クラウディング効果を定量的に明らかにし(Nucleic Acids Symp.Ser.2006,50,205-206)、さらに活性化エネルギーを算出することで、二次構造形成において核となる塩基対形成に関する重要な知見を得ることができた(Chem.Commun.2007,in press)。さらに、塩濃度変化に応答して二次構造が変化する核酸配列を用いることで、分子クラウディングは核酸の二次構造変化や実効塩濃度にはほとんど影響がないことも見出した(Nucleic Acids Res.,2007,35,486-494)。また、分子クラウディングはハンマーヘッド型リボザイムの活性を大きく向上させ(Nucleic Acids Symp.Ser.2006,50,81-82)、さらに興味深いことに、リボザイムのターンオーバーや活性構造のフォールディングまでもを促進させるという結果が得られた。この知見は、細胞内における高いリボザイム活性を説明するものと考えている。昨年度と今年度に得られた核酸構造やその熱力学的安定性、そして構造形成に関する相互作用データベースを考慮すると、核酸の構造安定性とその形成速度は水の活量の影響を大きく受け、分子クラウディングによってリボザイム活性構造のフォールディングが促進されるものと推察された。
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