研究概要 |
次世代超音速旅客機の開発においては,従来の航空機と比較しより一層の環境適合性が求められる.このようなジェットエンジン排気は不足膨張噴流となるため,「スクリーチ」と呼ばれるスパイク状の非常に強い騒音を放出し,大きな問題となっている.研究代表者はこれまでの研究で,「空力タブ」と呼ばれる騒音低減デバイスを提案しその騒音低減性能を実証してきた.このような騒音低減デバイス開発においては,「音源」の「位置」と「規模」の把握が重要となる,しかしながら噴流騒音の場合には,音源は「流れの中」にあり,マイクロフォンでの接触測定が不可能であった.本研究では「光学トモグラフィー法」と呼ばれる「光」を用いた非接触音響計測法を提案し,その測定可能性を検討した. 音は圧力の変動であり,同時に密度も変動する.超音速噴流にレーザビームを透過すると,噴流内外の密度勾配のため,その光路はわずかに曲がる.ただしレーザビームの曲がり量は,その光路に沿った積分値である.光路長全体にわたるレーザビーム曲がり量を,一種のシュリーレン光学系で検出し,その結果にアーベル変換を施すことで,噴流内部から静止雰囲気にわたる幅広い領域にわたる噴流騒音を,断層可視化した.これにより,(i)超音速噴流からのスクリーチ音源が第4ショックセル近傍に存在すること,(ii)噴流中心軸近傍にも大きな変動が見られ,渦とショックセルとの干渉が生じていることなど,これまで計測することができなかつた噴流内部の騒音源の振る舞いを,可視化することに成功した.この手法は,超音速噴流に限らず様々な音響場に適用可能であり,今後,大きく展開していく予定である.
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