研究概要 |
宇宙用マイクロウェーブロータの設計においては,軸受の観点からロータ回転数をできるだけ遅くする必要がある.そのためにはセル(流路)をできるだけ長くすることが求められるが,これは壁粘性の影響の増大につながり,空気圧縮を担う衝撃波の伝播が阻害される恐れがある.そこで本研究では,セル長さをパラメタとして,伝播衝撃波と壁面境界層の干渉を実験と数値解析によって観察することを目的とした.実験においては,セル内部の光学計測を行うために,本来回転するロータセルを固定し,給排気ポートを回転させるような実験装置を用いた.なお,セル長さは42mm及び168mmの2種類を用いた.一方,数値解析においては,ロータ平均半径面における2次元非定常粘性解析を行い,実験結果との比較を行った. まず実験においてシュリーレン法による衝撃波の可視化を行ったところ,ロータ回転数をある程度速くすると,いずれの長さのセルにおいても衝撃波伝播の様子がはっきりと観察された.そして,セル長さを42mmから168mmへと伸ばした場合に,ロータ回転数を半分にしても衝撃波の伝播を維持できることが確認された.さらにLDAによる流速測定を行ったところ,いずれのセルにおいても最大で約200m/sの流速が観測され,セル断面形状に対して速度境界層が充分薄いことが確認された.また,2次元数値解析結果との比較を行ったところ,物質境界面の渦構造付近では違いが見られたものの,圧力波によって誘起される流れ場については,全圧,流速,共に実験結果との良い一致が確認された. 以上のことから,マイクロウェーブロータの設計においては,セルを長くした場合でも,ある程度の回転数が確保できれば,本来の衝撃波伝播を達成することができることが分かった.そして,設計次第では,セルを長くすることによって衝撃波強度を維持しつつロータ回転数を遅く設定できることが確認された.
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