研究概要 |
小型人工衛星用の小型マイクロ波放電型イオンエンジンの開発を目標として,前年度の成果をもとに研究を行った. 前年度明らかになった性能のパラメータ依存性に関して,この相関関係を解明すべく,イオンエンジン内部のプラズマ状態を測定した.従来の静電プローブによる測定では内部に擾乱を与え測定が困難であるため,新たに可視化マイクロ波放電型イオンエンジンを設計・製作し,発光分光法により,プラズマ状態を測定した.これと並行して,マイクロ波を放出するアンテナを内部のプラズマ状態が測定できる測定子となるよう改良し,調査した.その結果,生成領域の形状依存性,及びプラズマ損失とエンジン形状の関係を解明した.これよりプラズマ生成・損失過程が明らかになり,設計指針を得ることができた. また,前年度に引き続き,放電室内の電磁界とプラズマ生成損失過程の解明のために,3次元非定常数値解析コードを作成し数値解析を行った.その結果,電子の振る舞いの磁場形状依存性が明らかになり,これは実験結果と矛盾しないものであった. 中和器に関して,性能向上の指針を得るため,プラズマ諸量の計測を行った.その結果プラズマ密度は印可磁場が電子サイクロトロン共鳴磁場において最大となった. これらの知見をもとに,世界最小サイズの,イオンビーム直径16mmの小型マイクロ波放電型イオンエンジンを製作し,性能を測定した.このエンジンの性能は,推力1mN,電気から推進力へのエネルギー変換効率は40%と,NASAが開発中のイオンエンジンの性能と比肩し,このサイズのエンジンとして世界最高の性能を達成した. また,大型化した矩形エンジンを設計,製作し,性能を測定した.このエンジンの性能は推力1.3mNで変換効率は30%であった.
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