研究概要 |
本研究課題は,新しい粘性流場の逆解析手法を示し,船型設計の支援ツールとしての応用可能性について検討をおこなったものである。研究最終年度である平成18年度は、平成17年度までに開発を行った2次元流場の逆解析手法の問題点の改善を試みた.計算の対象としたのは2次元キャビティー流れであり,指定した速度場,あるいは圧力場を実現するような境界条件求めることが目標である.本手法は,流場の支配方程式であるNS方程式および連続の式の残差を流場(速度場,圧力場)と形状等の境界条件(ここでは流速境界条件)の関数として捉え,その第一変分が0となるように境界条件と流場を拘束する,随伴方程式を解くことによって逆解析を実行するものである.局所線形化に基づく定式化であるため,目標とする流場を現在の流場から大きく変化させてしまうと非線形影響による誤差が生じることになる.この誤差については,ニュートン法による繰り返し計算によって修正を行っている.この手法は迅速に粘性流場の逆解析を行うことができるという特徴があるものの,特に境界近傍での流場の逆解析を行おうとすると収束性が悪化するという問題を抱えていた.そこで解くべき随伴方程式に高次項を付加し第2近似方程式を構成してこれを解くことにより,計算収束性を向上させることを試みた.その結果,これまでの第1近似随伴方程式を解く方法では,収束解が得られなかったような事例に対しても,本年度開発した第2近似随伴方程式を解く方法では収束解が得られることが示され,粘性流場逆解析手法としての精度向上を達成することができた.これにより本研究課題の研究目標は概ね達成されたと考える.
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