研究概要 |
堆肥試料からのテトラサイクリン耐性遺伝子の検出を試みた。また,堆肥および液肥製造過程の試料,および製品中には大量の微生物細胞が含まれていることに着目し,特に,強い生物活性を示す物質であるエンドトキシンを対象として,これらの検出・評価を行った。近年,エンドトキシンを始めとした微生物由来物質曝露による健康影響を評価するため,下水処理施設の労働者を対象とした疫学調査がいくつか報告されている。本研究では,堆肥施設におけるこうした微生物由来物質に起因する健康影響を評価する基礎として,下水処理施設における調査結果の整理を行った。また,モデル微生物として薬剤耐性遺伝子を導入した大腸菌(E.coli JM109/pBR322)を対象として,細胞数当たりのエンドトキシン活性を算出するとともに,堆肥から溶出した水試料,下水処理放流水および琵琶湖・淀川水系から採取した水試料中のエンドトキシン濃度と微生物数との関係を示した。この結果,下水処理放流水は非常に高いエンドトキシン活性を示し,また放流水が混入する淀川水系の採水地点においても未汚染地域の約10倍高いエンドトキシン活性を示した。さらに,各種消毒操作により混入微生物を不活化した状態においても,エンドトキシン活性は残存することを示した。これらの結果を総合すると,有機性廃棄物資源化プロセスにおいても,堆肥の切り返し時の粉塵拡散により大気のエンドトキシン汚染が起こる可能性のみならず,適切な排水処理を行ってもなお,水系のエンドトキシン汚染の主原因の一つとなりうることが示された。
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