研究概要 |
都市ごみ焼却残渣を水熱処理し熱水性二次鉱物を生成することにより、含有重金属を安定化することを試みた。この処理により焼却残渣を土木資材等として再資源化することにより循環型社会の形成に寄与することを目的とする。都市ごみ焼却残渣は自然界の熱水性二次鉱物と化学組成が異なるため、不足成分を他の廃棄物を混合することにより補う点に特徴を有する。また、土木資材等として長期にわたり雨水に曝された場合、酸性雨の影響により間隙水のpHが低下し、焼却残渣中の重金属が溶出する恐れがあるが、中性-酸性で安定な粘土鉱物を水熱処理により生成させ、重金属を鉱物内部に予め取り込むことにより溶出を防止することができる。 本年度は昨年度の結果を踏まえ,珪素とマグネシウムを補った系を中心とした実験を行なった。反応系の液固比は5、温度は200℃、圧力は自生圧とし、反応時間は24〜240時間とした。反応溶液にはイオン交換水を用いた。水熱処理の結果、化学組成を調整しない試料ではtobermorite、analcime、katoite、corundumが生成されていたのに対し,Mg(OH)_2とSiO_2を添加した試料ではcorundumの他に反応時間により異なる鉱物が生成していた。Z-phase mineralが24と48時間の処理で生成し、kaolinite/smectite混合層粘土鉱物とtobermoriteが72、120、240時間の処理で生成していた。120と240時間の処理ではさらにanalcimeとchrysotileが検出された。このときの反応後溶液中の重金属濃度はCr、Cu、Zn、Pbともに0.06mg/L以下の濃度で推移しており、特に72時間処理後以降では0.02mg/L以下の濃度となっている。この濃度は未処理試料の環告46号試験の結果(Cr:0.11mg/L、Zn:1.23mg/L、Pb:1.43mg/L)と比較すると著しく低い値であり、水熱処理により重金属が封じ込められていることが分かった。
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