研究概要 |
当研究所TPD-IIで発見されたデタッチメント・フロントの自励振動[A.Matsubara et al., J.Plasma Fusion Res.78,(2002)196]のさらなる理解のために,プラギング効果に密接に関わる密度と温度の沿磁力線分布を計測することを目的とした。これまでの実験より,この振動は緩和(弛緩)振動の一種であり,振動の振幅および周期は,プラギング効果と密接に関係することが定性的に分かってきた。また数値計算により,振動の発生はオリフィスにおけるプラズマ圧とその沿磁力線勾配とに強く依存することが予想されるようになった。これらのことを定量的に明らかにしていくためには,プラギング効果に密接に関わるプラズマ圧(プラズマ密度×電子温度)の沿磁力線分布の計測が必要となる。本課題では,プラズマ圧の沿磁力線分布を計測し,振動の振輻および周期,そして振動発生に及ぼすプラギング効果を定量的に明らかにすることを目的としている。申請した設備,すなわち「多点集光分光システム」により,いろいろな沿磁力線位置におけるプラズマからの発光を一度に可視分光器に導き,振動に伴うデタッチメント・フロントの位置同定を行ったり,局所熱平衡を仮定したボルツマン法やまたトムソン散乱法を用いて電子温度の沿磁力線分布測定を行ったりする。初年度は本システムの立上げ準備を行った。本システムは,磁力線に沿ったいろいろな位置に集光系を配置し,それぞれで受光された光をいくつもの光ファイバにて一台の既存分光器に伝送し分光するものである。分光器の入射側において,一本一本のファイバを入射スリットに沿わせるように並べる。こうすることで,出射側には沿磁力線位置に対応するスペクトルパターンが縦に積まれたような像として現れる。この像を既存の高速CCDカメラで連続撮影し,スペクトル解析を行う。測定波長領域を紫外まで広げて測定することや,軸方向位置に関して空間分解能をさらに向上させるため,また半径方向分布の計測に対しても,高い空間分解を持つものが必要であった。このため紫外域でも強度減衰の少ない光ファイバを,また空間分解能を上げるために紫外域に対応した集光部(カメラレンズ)を購入した。最終年度では,立ち上げた分光システムを用いて実際に往復運動するプラズマの発光分光を行うことに成功した。
|