研究概要 |
T110078(PixD)は,フラビン(FAD)を補欠因子とする青色光受容体として近年発見されたBLUFタンパク質ドメイン(The sensor for Blue-Light Using FAD)を含むタンパク質のひとつである.BLUFドメインは約100のアミノ酸残基数から成り,FADを分子内に1つ保持する.ゲノム解析により,BLUFドメインは細菌やシアノバクテリアなどの生物種に広く保存されていることが明らかになっており,その光受容機構について興味が持たれている. 平成18年度は,平成17年度に明らかにしたT110078の立体構造を基に部位特異的変異体の作成を行い,その光受容反応を調べた.T110078の光受容反応の有無は,T110078の吸収スペクトルピークが約10nM長波長側にシフトする現象により確認できる.その結果,FADに直接結合しているアミノ酸残基のうち,Gln50が光受容反応に必須であり,Gln50-Tyr8-FADというネットワークが光受容反応に非常に重要な役割を果たしていることが分かった.また,10Kの極低温下においては,5nM波長シフトした状態を観測した.これは光受容サイクルが極低温下では途中で停止すること,すなわち反応中間体を極低温で捕らえた事を示している.また,更に詳細な立体構造を得ることを目標にして,高分解能結晶を得ることを目的に結晶化条件の再検索を行った.その結果,イソプロピルアルコールを沈殿剤とした条件で再現性よく結晶を得ることを見いだした.
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