研究概要 |
青色光受容フラビン蛋白質はphototropin、cryptochrome、BLUF(blue-light sensing protein using FAD)をドメインに持つ新奇蛋白質が知られている。光照射によりFADの可視吸収スペクトルが長波長シフトするが、光反応機構の詳細は明らかになっていない。光照射によるFAD近傍の構造変化はフーリエ変換赤外(FTIR)差スペクトルに敏感に反映され、量子化学計算によりスペクトルを詳細に解析することが可能である。本年度は紅色細菌BLUF AppAのFTIRスペクトル測定及び量子化学計算を行った。(1)発色団をFAD、FMN、riboflavinで再構成したAppAの光励起FTIR差スペクトルはほぼ同一であった。密度汎関数法によりriboflavin、FMN、FADの振動計算を行い、isoalloxazine環へ水素結合形成の有無によりADP/AMP moietyの振動数は変化せず、ADP/AMP moietyの有無によりisoalloxazine環の振動数は変化しないことを確認した。(2)isoalloxazine環の炭素と窒素を特異的に^<13>C,^<15>Nで同位体標識したFADをもつAppAドメインを再構成しFTIRスペクトルの測定を行った。FAD C4=O伸縮振動バンドは1709(-)/1695(+)cm^<-1>(^<13>CラベルAppAで1670(-)/1653(+)cm^<-1>)に観測される。4,10a^<-13>C FAD AppAドメインのFTIRスペクトルでC4=O伸縮振動バンドはほとんど消失した。この結果はC4=O伸縮振動と他の振動モードのカップリング構成比および光照射によるisoalloxazine環への水素結合状態に関する重要な情報を含むことを示唆し、現在lumiflavinに様々なアミノ酸残基を配置した系の量子化学計算を行いFTIRバンドを解析している。
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