研究概要 |
膜蛋白質バクテリオロドプシン(BR)は、光を吸収することにより膜の内外に水素イオンの濃度勾配を作り出す。この光駆動プロトンポンプの反応中間体は低温下でトラップすることが可能であり、これらの構造解析も行われている。しかし温度と蛋白質の運動との関係は不明確であるため、われわれはX線結晶構造解析法を用いて構造の温度依存性を調べている。 今年度は昨年度に引き続きBRの結晶の質と結晶の取り扱い技術の向上に努めた。BRの結晶化は粘性の高い脂質中で行うため、昨年度に脂質からの取り出しの技術も確立したが、その技術をさらに向上させた。その結果、脂質をほぼ完全に除去できるようになった。その結果X線回折像で脂質由来の回折リングがなくなり、バックグラウンドを低下させることに成功した。この結晶を用いてX線回折実験を再度行い、100Kから200Kまでの温度で、実験室のX線発生装置を用いて1.8A超分解能の回折データの収集を行った。また大型放射光施設Spring-8のBL38B1で温度変化させた測定を行った。このデータの分解能は1.6A程度に達した。このデータは解析中である。現在までに結晶格子の軸長の変化を見出した。a, b軸の長さは温度とともに増加していくのに対して、c軸は170K程度で長さが最大となった。これはa, b軸方向はBRの膜面内方向であるのに対し、c軸は膜面に垂直な方向であることから、膜面と膜面の間に存在する水の影響が示唆された。
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