研究概要 |
動物・植物の双方から新奇プログラム細胞死制御因子を探索し,機能解析することを目的に研究をおこない,下記の点を明らかにした. 1,AtILP(Arabidopsis thaliana IAP-like protein)の機能 比較ゲノム科学的解析より,ヒトのアポトーシス抑制因子IAP(Inhibitor of Apoptosis Protein)の機能的ホモログ候補として単離したシロイヌナズナAtILP1,AtILP2遺伝子は,タバコ培養細胞BY-2において過酸化水素誘導性細胞死を抑制する機能を持つことを明らかにした.さらに,AtILP1,AtILP2とGFP融合蛋白質はBY-2及びシロイヌナズナの核に局在することを明らかにした.これらの結果は,AtILP1,AtILP2が核に局在する新奇プログラム細胞死抑制御因子であることを示唆するものである. 2,AtSmac(Arabidopsis thaliana Smac/DIABLO)の機能 AtSmac遺伝子は,哺乳類においてIAPと相反する機能を持つSmac/DIABLOの機能的ホモログ候補として,シロイヌナズナより単離した.AtSmac遺伝子の過剰発現により,カビ毒FB-1誘導性細胞死が促進され,防御関連遺伝子や細胞死誘導時の液胞膜崩壊に関わるγVPE遺伝子の発現が上昇することを明らかにした.これらの結果は,AtSmacが新奇プログラム細胞死促進因子であることを示唆するものである. 3,HsILP1(Homo sapience IAP-like protein)の機能 AtILPのパラログであるHsILP1のアポトーシス抑制メカニズムを解明するためにcaspase-3/7の活性抑制能を調べたところ,これらの活性抑制には関与しないことを明らかにした.この結果は,HsILP1はIAPとは異なる経路でアポトーシス抑制に関与することを示唆するものである.
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