研究課題
若手研究(B)
平成18年度は、精子膜上で融合因子Izumoと相互作用する因子の同定に成功した。これまで受精の融合に関与する様々な候補分子が挙げられていることから、融合は1組の分子の相互作用で完成される単純な機構であることは考えにくい。実際に、ほ乳類の培養細胞から作製したリコンビナントIzumoを透明帯除去未受精卵に加えたが、Izumo分子単独で卵子上に結合する証拠は得られなかった。このことは、Izumoが精子膜上の他の分子を介して融合能を示す分子であることを示している。Izumoと協同して働く因子を同定する目的で、Izumoの細胞内ドメインのC末端にHisタグを付加したTGマウスを作製し、その精子膜タンパク質から抗Hisタグ抗体を用いてIzumo-Hisを精製し、そのとき共精製されるタンパク質のアミノ酸配列をLC-MS/MSにより決定した。その結果、意外なタンパク質が同定された。このタンパク質はACE(Angiotensin-converting enzyme)に類似する膜タンパク質であり、全く機能未知のタンパク質であった。最近、精巣型ACEは従来のジペプチジルカルボキシペプチダーゼ活性の他にGPIアンカー型タンパク質を切断する活性もあり、精子と卵透明帯の相互作用を制御していることが報告されている。この研究成果は、今まで主に血圧調節機構について研究されてきたACEが、受精の膜融合や相互作用に深く関与するという新展開を導く非常に興味深い結果である。
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